近年の医療訴訟では「過失は無いが(可愛そうだから病院医者金あるのだろうから)賠償せよ」というとんでもない判決が見られますが、今後ニーズが激増する介護も訴訟賠償リスクが膨らんでいます。国として「要介護者はそもそも生きているだけで事故リスクがある」ことを明確にし、重い過失が無い限りは免責するような法整備を喫緊にしなければ、既に人手不足の介護現場は予想外に早く崩壊しかねない様相になってきました。
今年2019年3月25日、2013年12月に長野県内の特別養護老人ホームの女性入所者(当時85歳)がおやつをのどに詰まらせて死亡した事件について、介助に当たっていた准看護師(50代)に長野地裁松本支部で業務上過失致死により罰金20万円の有罪判決が出ました。
また昨年2018年10月17日には、2013年に認知症(当時89歳)で入院中の男性患者が車椅子で一人でトイレに行き転倒、全身麻痺の障害が残ったとして、熊本地裁で病院側に2770万円の賠償金支払いを命じる判決が出ています。
長野の事件では「死亡した女性は食べ物を口に詰め込む癖があったのに、被告准看護師は注意を怠った」等の理由で刑事有罪となっています。しかし無罪を求める約44万5500筆もの署名提出され弁護団も結成、23回もの公判にも関わらずの有罪判決は、現場にとってはあまりに過酷かつ現実的に実現不可能な「注意義務」を要求するものではないかと想われます(犯罪構成の三要件の点で疑問です)。また多くの業務上過失事件では重い過失が無く初犯であれば執行猶予が付くのが通常と想われますが、罰金刑とはいえ実刑判決というのも苛烈な印象を受けます。
熊本の事件では「家族が自宅等で面倒見れないような状態の認知症(長谷川式0点、妄想、易怒性顕著だったとの情報あり)」であり歩行も不安定で転ばないために車椅子に乗せたと想われますが、車椅子にも関わらず転倒する等、本人の状態が相当悪かったことが想像されます。しかし近年は抑制禁止され原則自由行動させるよう行政が指導しています。その結果の事故で、原告側請求はなんと3890万円(遺失利益は算定せず慰謝料等)。ちなみ事故発生は20時頃、この病院は40人に対し夜勤者3名だったのことですから、現実的にでき得る手厚い人員体制だったと言えると想います。
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生命の価値に軽重は無いとはいいつつも、平均寿命に迫りまたは超えて要介護状態すなわち健康ではない人について、家族介護のように一人せいぜい二人ではなく数十人もケアしなければならない状態で「何もかも完全に注意監視し安全確保できなかったことを犯罪に問う」あるいは「数千万円の慰謝料」をもって介護職や看護職に懲罰的に迫ることは、個々の事例のみならず、超高齢化社会を支える体制システムや姿勢という点で、妥当なのでしょうか。
もし厳しい選抜や罰則により資質の高いケア者を十分数選別できるというならまだ余地がありますが、現実は介護職は上は大卒院卒から下は中学校卒、下は10代から上は80代まで、あらゆるレベルの人を動員している状態です。できるひとはできるなりに、能力が低い人もできる範囲でケアに携わってもらわなければ、今すでに手が足りない状況、「厳しく選ぶ」余地などありません。
悪しき前例として、福島県の通称大野病院事件、産婦についての医療訴訟の結果、立ち去り型サボタージュが発生し産科医療崩壊を招いた(今も産科医不足として影響は残っているようです)事例があります。にも拘わらず、日本の司法あるい行政は何らの対策を講じた形跡がないように見えます。救急医療ではBLS(救命法)が市民にも普及を始め、「善きサマリア人の法整備=重過失無ければ善意の救命・医療行為の過失責任を問わない」の必要性が叫ばれて久しいですが、実現していません。
オリンピックや令和改元でお祭り騒ぎする前に、確実に現実に目に見えてきている超高齢化、介護やケアの問題、それを支える介護職看護職ケア者をどう確保し育てるかそして「どう護るか」行政も司法も市民も真摯に考え、上記「善きサマリア人の法(俗称)」すなわち「重過失や悪意無き場合の医療看護介護校医の結果については原則免責する」法整備をなす必要があると考えます。
そして「要介護者は自分の身の安全を護れない。他人が護るには限界がある。すなわち事故は起きても致し方が無い」ことを、本人含め市民は知るべき、また医療者ケア者は強く啓蒙すべき(特にサービス契約時には必ず書面で説明し同意を得るべき)と想います。
入所者がおやつ詰まらせ死亡、介助の准看護師に有罪判決:朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASM3T425CM3TUOOB004.html
病院に2770万賠償命令、熊本 入院中転倒で後遺症 | 2018/10/17 - 共同通信
https://this.kiji.is/425234614623847521
2019年05月06日
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