2021年06月20日

新型コロナ集団接種を機に・アップデートされる筋肉注射部位

 新型コロナワクチンの集団接種が開始され、これまでに無かった多数の筋肉注射が実施されることとなりました。それに際しプライマリケア連合学会では筋肉注射部位を解剖学的知見に基づきアップデートしています。

 特に我が国日本のワクチンのほぼ全ては(子宮頸がんワクチン以外)皮下注射となっています。これはかつてワクチン禍すなわちワクチン注射後の麻痺等が発生し、国を被告とした裁判で国の責任が問われた(最近判決が確定)ことや、免疫反応をより効果的に起こすため等の理由があるようです。
 一般的な医療の現場では静脈留置針が普及したこともあり、筋肉注射での薬剤投与の機会は大分少なくなっているのではと想います。しかしご存じのように筋肉注射は深く穿刺するため神経損傷のリスクがあります。

 プライマリケア連合学会ではこれまでの「肩峰から三横指下」ではなく、「前腋下線と後腋下線を結んだ線に肩峰からの垂線の交わる部位」を推奨しており、これまでの部位より数cm下になります。これにより腋下神経と後上腕回線動脈を確実に避けることができるようです。また従来の部位だと三角筋下滑液包つまり肩関節内に注射してしまうリスクがあるようです。もちろん体格には個人差がありますが、「従来の肩峰から三横指下より少し下」がより安全で望ましい、と考えて良いと想います。

 ただしこの部位にも問題があります。新型コロナワクチン接種対象者となる高齢者の場合、フレイルと言わずとも痩せている・筋肉が少ない方が多く居ます。この場合、動画等のように25mmの筋注針を根元まで垂直に穿刺すると、筋肉を突き抜け骨に当たる可能性が少なくありません。そのため対象者の皮下脂肪と筋肉の厚みを見計らい穿刺する必要があります。
 筆者は充分な腕の太さが無い場合はやや斜めに穿刺することで、筋層が薄くても細かな穿刺深度のコントロールができるようにしています。特にコツンという感触があれば骨に当たっているので数mm針を引き戻してください。またビリビリ、ビリッという電撃痛がないか確認し、電撃痛があれば迷わず場所をずらして穿刺し直すべきです。


『新型コロナワクチン より安全な新しい筋注の方法 ダイジェスト版』日本プライマリ・ケア連合学会ワクチンチーム 製作・監修
https://www.youtube.com/watch?v=TwoMs0BjIdk

穿刺部位
https://youtu.be/TwoMs0BjIdk?t=105

奈良県立医科大学臨床研修センター 研修医用 筋肉注射手技マニュアルv1.7
https://www.nmu-resident.jp/info/files/intramuscular17.pdf

筋肉注射マニュアル(v1.7)・筋肉注射手技に関する論文を公開しました。
https://www.nmu-resident.jp/intramuscular.html
posted by 実践研究員その一 at 11:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 教育研究
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