2024年07月25日

ボケても「お馴染み」になれる理由

 いよいよ「2025年問題」超高齢化社会本番、団塊世代が後期高齢者入りし認知症もいよいよ社会問題になっています。その認知症ケアでは「なじみの関係」が言われます。馴染みの顔、人、ケア者や物品、場所が認知症の症状を和らげると。その科学的理由、エビデンスの重要な一端が解明されました。

 筆者がちょうど10年ほど前、ある認知症グループホームの統括施設長だったとき。神奈川から外房まで週二回、高速通勤「出稼ぎ」していたのですが。2ユニットに認知症デイ、居宅もあり、人が足りないなんとかしてくれというので山超えてハローワークに赴くことも多く、利用者さんの前には中々出られなかったのですが。それでも出勤日は必ず朝昼夕と各ユニットに顔を出すようにしていました。

 するとある日、一人の入居者のおばあちゃんが「あんた、よく来るねー。名前覚えられないんだけどね」と笑いながら通り過ぎていきました。名前覚えられない。認知症ですから当然。ですが「よく来るね」?? 私の顔を覚えている!?

 そうです、どうやら「覚えている」らしいことが解明されました。

* * *

 筑波大学医学医療系國松淳助教、京都大学ヒト行動進化研究センター網田英敏特任准教授らは、サルの脳に微細電極を差し込み神経活動を測定しました。すると、社会的な関わりの多い親しい人の顔が、物の価値を認識するのと同じ神経メカニズムによって、大脳基底核(特に線条体尾部)という脳の領域で学習されることを見出しました。すなわち、一年以上世話してくれる人と知らない人で脳活動を記録し比較すると、世話してくれる親しい人では、価値の高いものに対し反応するのと同じ部位が反応していました。

 価値の高いものに反応するとは、いわゆる報酬系、例えば赤と白のレバーがあり、赤いレバーを引くとバナナが出てくるが、白いレバーは何も出ない、するとサルなど学習能力がある動物は赤いレバーを「価値あるもの」として認識、学習記憶できます。この部位は視線移動にも関わるとされており、「価値あるもの」を素早く見つけるため「キョロキョロする」ことを司るとされています。

 そして大脳基底核とは大脳が進化する過程で最初にできた部分で、感情や学習特に生存に必要な食欲等の基本的ニーズに関する行動について司ることが知られています。
 つまり「親しい人、優しい人、なじみの人」は「自分にとって価値あるもの」として大脳の最も基軸になる部分で学習記憶される。

 しかし「名前」は言語、記号として大脳皮質で学習記憶される、ところが認知症で壊れるのは大脳皮質、なので名前は覚えられない。

 結果として認知症の人は「本能的に、なじみの人、親しい優しい人は、覚えられる」! 名前という記号はつけられないけど、文字通り顔パスできる!

* * *

 筆者は90年代から認知症ケアに携わり、奇跡と言わずともえっ! というような、周囲も驚くような「成果」を挙げてきました。その理由、10年いやその前から、何か不思議に想っていたことが、ついに科学的に解明されました!

 それは記憶ならぬ情で覚えてる「情憶」とでも呼ぶべき「能力」と言えます。人の顔を覚えられるなら、「価値あるもの」色々なものが「ボケてからでも、覚えられる」それがグループホームさらにはできるだけ自宅で暮らし続けることが、認知症ケアでは症状安定、より良い穏やかな生活につながる、その理論付けとなり、より理論的に認知症ケアを構築していくことにつながるはずです。

「ボケても感情とプライドは残る」と言われます。それは、記号、文字としての言葉を認識できなくなっても、「価値ある人=優しい親切で面倒見てくれて微笑んでくれる人」は認識し覚えられるし、そうでなければ拒絶する、そういうこと、ある意味「人間の本能」と言えるでしょう。

 日常臨床的には。何かと怒ったりブッキラボーな人より、優しくニコニコしてくれる人方が「価値がある」認知症の人に好かれる、覚えてもらえるようになれたら、それは誰にでも「イイ人」きっと仕事やビジネスで成功できそうですね(?)


親しい人の顔を学習する神経メカニズムを解明 | 日本の研究.com
https://research-er.jp/articles/view/134450
posted by 実践研究員その一 at 16:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 認知症ケア
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